hyde 黒ミサBirthday Live
1/23から続いていたライブもとうとう1/29の彼の誕生日を持って終焉を迎えた。
黒ミサは2017年末のライブビューイング以来となるのだが、
そのセットリストの壮大さには今回も期待値が跳ね上がるのは無理もなかった。
しかし、驚くことなかれ、今回のライブはその期待値を超えてきたのだ。
ここにその全容を記すこととする。
始まりはJesus Christ.
それは観客とオケの共鳴を誘発し、
一瞬でhydeの世界へと陶酔させてしまう起爆装置。
バイオリンで刻まれる旋律は、品が滲み出る音階を刻んでいき、
座して聴くこのコンサートスタイルを体に染み込ませていく。
次はA drop of Color.
hydeのお気に入りといったところか。
英詞とオケの相性の良さが印象的な一曲である。
そしてEvergreen.
ロンドンの暗い景色の中作られた楽曲は死に立ち向かう友人を想った曲である。
一聴すると麗しい雰囲気をevergreenという言葉に見出すかもしれない。
しかし彼は死を目の前にした鮮やかさ、生の煌めきをこの言葉に込めているのだ。
死生観を漂わせるのは彼の18番ではあるが、これほどまでに綺麗な、ある種逆説的な彩りを放っている曲は数少ないと思われる。
オケとの相性も抜群であり、咽び泣く観衆の声が木霊していたのは言うまでもない。
続いて繰り出されたのはShallow sleep.
”駆け出していく想いはどこかで君に会えるような予感がした”
このキラーフレーズが映える曲がどこにあろうか、ここにしか無いと私は思う。
1番、2番と穏やかなリズムを刻みつつ、3番手前からバイオリンの音色でリズムを早め、全体を牽引していく構成はまさに圧巻の一言である。
そしてDepartures.
小室氏から指名を受けて歌唱することになった一曲。
まだ売れる前にJRタイアップを勝ち取っていたこの曲に当時は羨ましさを覚えていたというのだが、その曲をまさか20年経って歌うことになるとは誰が予想していたであろう。
”愛が夢を邪魔する”
”夢が愛を見つける”
”やさしさが愛を探して あなたが私を選んでくれたから”
このCメロは何度聞いても引き込まれてしまう圧倒的様式美。
この詞を考えた小室哲哉、この詞を歌い切るhydeの素晴らしさに
我々はただただひれ伏し、二人へのリスペクトを募らせることしかできないのだ。
続いてZIPANG.
日本の素晴らしさを世界に伝えたいというテーマのもと最初は英詞で挑戦していたのを日本語に変えてリリースすることとなった異色の作品。京都観光時のホテルで作った鼻歌から彦にゃんが壮大なバラードへと変換していく様がチームとしての力強さを感じさせてくれた。
間奏中のhydeのシャウトが印象的で、曲間での唯一の英詞が頭に去来するそんな一曲であった。
ここからはラルクパート。
叙情詩がいつものアカペラパートから始まっていく。
hydeがいかにこの曲を愛しているかが如実に伝わるとともに、オケが奏でる緻密な音の連なりは音楽単体でも魅せられる、そんな完成度を誇っていた。ラルクverももちろん良いのだが、発信者がラルクで無い場合の価値も同時に提示してくれる、未だ見ぬ可能性を感じさせる一曲であった。
畳み掛けるようにLoreley.
hydeのサックスから放たれる音色が会場に新たな風を注ぎ込む。ライン川に佇むローレライを想いながら、その旋律に耳を委ねられる幸せといったら無いだろう。1/29についてはCメロ後についてもサックスが追加されていた。
そしてIn The Air.
私自身の中では本セットリストの中で至上の作品と言わざるを得ない。オケアレンジとセットを照らしていく青の光がこの曲の世界観そのものを投影している。Final Fantasyの飛空挺で空を旋回している景色すら想わせてくれる空前絶後のオケアレンジに言葉は必要なかった。詞の世界と音色のコントラストもまさしく絶景である本曲は本セトリの核といえよう。
1/29の際にはそれまで見られていた静と動の振れ幅を無くし、躍動感を尊重した構成となっていたのもまた素晴らしかった。
”You fly over the earth. Can’t you see, I am tied to the ground”
改めて歌詞を見直して起こったパラダイム。
それは爽やかなメロディーに真っ向から逆行するニヒリズムの存在だ。
繰り返しになるが、これを至高と言わずして何と言うべきか、私にはわからない。
※てっちゃん以外の人が肝となる始まりと終わりのベースを奏でていたのは少々複雑。
そしてflower.
今までは好きではなかったというあるあるのエピソードを披露。
楽曲に対してはこのオケアレンジについて特筆すべきことはなし。
そして満を持してRed Swan.
In The Air同様、浮遊感と高揚感を携えたオケ隊はhydeの歌声に負けないくらいの迫力を放っている。
しかしそれに負けないhydeの高音域の力強さが同時に引き立てられ、神の領域と言える相乗効果をもってして、観客を席巻する。
In The Airに続く次点での核となるこの名曲、YOSHIKIの才を賛美するしかない。
SUGIZOでは無いものの、ギターソロもまたかっこよく、ギターとオケの融合美を垣間見た。
ラストのシャウト、それは珠玉の言霊。
”We’ll fly away”
“We’ll see the end. We’ll be the end”
五感で感じる音楽がそこにはあった。
ここで一転ピアノの前奏が鳴り響く、そうVAMPIRE’S LOVEの開演だ。
バラードのオケアレンジはコントラストを出しにくい気もするが、VAMPSの邪気を浄化した清廉さが生まれていた。
聖気すら漂わせてしまうのは、誰が成せる所業であろう。
そしてHONEY。
作成時から好きだったと言わしめる代表曲であるが、死生観をまたしても感じさせる歌詞の世界観を改めて痛感する。
続いてXXX.
ラルクを含めて、続けざまに演奏するあたり彼のこの曲への愛を感じさせてくれる。
R&BとRockの融合、さらにオケ隊との連鎖反応は流石の一言。
そしてforbidden lover.
この曲もセトリの中では定番曲の部類に入るが、オケ隊が奏でることでその壮大さが比類なく増幅される。
涙を流しながら最後を歌い切るhydeはただただ美しい。
さながら曲の化身と言うべきなのか。
そして耳覚えのない旋律が奏でられる。これは何かと疑った瞬間に訪れる調べ。
それは永遠への誘いであった。
”波が寄せては返す。この足元に”
バラードでありながらその音階がもたらす浮遊感こそが、この曲の真髄。
揺らめきがゆっくりと歩を進め、観客を飲み込んでいく。そして観衆は為す術なくその世界観にひざまづき、永遠を捧げていく。
hydeに捧げし全てこそが我々の永遠なのではないか、そんな解釈すらも許せてしまう程に唯々身を委ねることしてかできない。
そしてhydeから残り2曲とカウントダウンが明示されるなか、解き放たれたのはMEMORIES.
このBirthday Liveに最も即している歌詞という触れ込みの元、静かに演奏は始まっていく。
しっとりとした雰囲気が会場を覆っていき、自然と歌詞の世界の中へ導かれていく。
誰もがhydeと過ごした時間を回顧し、この節目の尊さを改めて噛み締めていく。
間奏からまたしてもバイオリン隊のリードによりテンポが加速していくと、会場の雰囲気は最高潮に。
hydeまでもが涙を流し、歌唱できなくなる事態に、涙腺は自ずと決壊していく。
彼の存在が我々の人生の一部なのだと、彼が残した足跡をこれからも大事にしまっておこうと
そんな想いが心を満たしていく。
今回のMEMORIESは、hydeと我々との今と昔、そしてこれからを紡いでいく絆の象徴なのではないか。
”風を切るように僕らは駆け抜けた 眩しい日差し浴びて”
”どこまでもずっと一緒だと信じてた 僕の大事なMemories”
そしてラスト。
愛する人がつまらない争いに巻き込まれないようにと、
朝起きたら争いがなくなっていることが僕の夢だと告げられて、始まったのが星空。
ライトを灯す客席も、舞台装置の一つとなり会場を優しく照らしていく。
純粋なhydeの想いが、聞いてる心の真芯をまっすぐに貫いていくのがとても心地よい。
溢れ出る最後のフェイクは平和を願う彼の心の底からの咆哮なのだろう。
hydeというヴォーカリストに出会えた奇跡に観客は皆酔いしれる、そんな最後を彩る素晴らしい一曲であった。
従来はここで終わりなのだが、1/29に限っては思わぬ方向にライブは進んでいく。
なんとサプライズゲストが降臨したのだ。登場したのはKenである。
もともとhydeとの交流はメンバーの中でも盛んな方であったが、
わざわざ和歌山へと舞い降りるあたりに彼のhyde愛を感じさせられる。
プレゼントを渡し終えた後、ギターをおもむろに手に取り彼は言う。
”hydeにしか歌えない曲、今からやるよ”
固唾をのんで見守る中、困惑するhydeを他所にオケ隊が奏で始めたのはWhite Feathers.
ギターのリフがKenから放たれ、オーケストラと融合していくと、何故だろうか不思議な安心感がそこには生まれていった。
hydeとKenの笑顔を最後に観れる喜びよ。
白い羽すら舞い降りてくる珠玉の演出には、全身鳥肌ものである。
Kenのギターソロが鳴り響くと、その輪郭はさらに際立ち、hydeの歌声が天へと舞い上がる。
hydeとKen、その唯一無二の関係性が天まで轟いているかのような錯覚に浸らせてくれたのは、
まさしく誕生日の奇跡といえよう。
最後にオケ隊を制するhydeは潔いまでに格好良く、今でも脳裏に刻まれている。